遺産分割協議がまとまらないときに知っておきたい司法書士のサポート
大切なご家族が亡くなった後、避けては通れないのが遺産相続の問題です。特に、故人が遺言書を残していなかった場合、誰がどの財産を受け継ぐのかを相続人全員で話し合って決める「遺産分割協議」が必要になります。
しかし、この話し合いがスムーズに進まず、家族間の関係がこじれてしまうケースは少なくありません。
この記事では、遺産分割協議がまとまらないときに、法律の専門家である司法書士がどのようにあなたの力になれるのか、その役割と具体的なサポート内容を分かりやすく解説します。
1. 遺産分割協議の基本と「まとまらない」原因
まずは、遺産分割協議とはどのような手続きなのか、そしてなぜ話し合いが難航してしまうのか、その基本的な仕組みと典型的な原因について見ていきましょう。
遺産分割協議とは何か?
人が亡くなると、その人が持っていた財産(遺産)は、相続人が複数いる場合、法律上、一時的に相続人全員の「共有」の状態になります。
この共有状態にある財産を、具体的に「誰が」「何を」「どれだけ」受け取るのかを、相続人全員で話し合って決める手続きが遺産分割協議です。
この協議では、相続人全員が合意すれば、法律で定められた相続割合(法定相続分)とは異なる分け方もできます。相続人それぞれの事情を考慮し、柔軟な解決を目指すことが可能なのが特徴です。
遺産分割が難航する典型的なケース
遺産分割協議は、必ずしも円満に進むとは限りません。協議が難航する主な原因には、以下のようなケースが挙げられます。
- 財産の内容による問題
遺産に不動産や自動車など、物理的に分割しにくい財産が含まれている場合、誰がそれを取得するのか、あるいは売却するのかで意見が対立しやすくなります。 - 相続人間の感情的な対立
お金が絡む問題であるため、普段は仲の良い家族でも感情的になりがちです。「自分の方が親の面倒を見てきたのに」といった不満が噴出し、話し合いがこじれることがあります。 - コミュニケーションの問題
相続人の中に遠方で暮らす人がいる、あるいは関係が疎遠で話し合いに応じてくれない人がいる場合、協議を進めること自体が困難になります。「もめ事に巻き込まれたくない」という理由で協力を拒否されるケースも少なくありません。
協議がまとまらないとどうなる?
相続人同士の話し合いで合意に至らない場合、そのままでは遺産を分けることができません。その場合、法的な手続きに移行することになります。
家庭裁判所での手続きへ
まず、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停では、裁判官や調停委員という中立的な第三者が間に入り、各相続人の意見を聞きながら、合意に向けた調整を行います。
調停でも話し合いがまとまらない場合は「遺産分割審判」という手続きに移行します。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を最終的に決定します。
10年の時間制限に注意
2023年4月1日に施行された改正民法により、遺産分割には新たなルールが加わりました。相続が始まってから10年が経過すると、原則として法律で定められた「法定相続分」に基づいて遺産を分けることになります。
これにより、特定の相続人が親の介護をした「寄与分」や、生前に多くの援助を受けていた「特別受益」といった個別の事情が考慮されにくくなるため、長期間放置することにはリスクが伴います。
2. 司法書士は遺産分割協議で何ができるのか?
遺産分割協議が難航しそうなとき、法律の専門家である司法書士がどのように関わることができるのでしょうか。ここでは、司法書士の役割と専門分野、そして依頼するメリットについて解説します。
司法書士の役割と専門分野
司法書士は、司法書士法に基づく国家資格者であり、主な業務は以下の通りです。
- 登記または供託に関する手続きの代理
- 法務局や裁判所、検察庁に提出する書類の作成
- 上記に関する相談業務
遺産分割においては、協議の結果に基づいて不動産の名義変更を行う「相続登記」が司法書士の主要な業務となります。また、その前提となる遺産分割協議書の作成も、不動産登記が関連する契約書として、司法書士が手掛けることが多い業務の一つです。
協議の代理はできないが、できることは多い
遺産分割協議において、相続人間で意見が対立し「法的な紛争」となっている場合、特定の相続人の「代理人」として他の相続人と交渉したり、裁判で代理人として活動したりすることは、原則として弁護士の独占業務です。司法書士がこのような交渉を行うことは、弁護士法72条に違反する可能性があります。
しかし、司法書士ができることは数多くあります。相続人間で争いがない(紛争性がない)ケースであれば、司法書士は中立的な立場で次のようなサポートを提供できます。
- 遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意内容を法的に有効な書面として作成します。この協議書は、不動産の相続登記や預貯金の名義変更手続きに必要となります。 - 書類作成に関するアドバイス
協議書を作成するために必要な法律的な助言を行います。 - 相続登記手続きの代理
作成した遺産分割協議書に基づき、不動産の名義変更手続きを代理して行います。
司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議に関連する手続きを司法書士に依頼する主なメリットは、以下の通りです。
- 登記まで見据えた正確な書類が作成できる
遺産分割協議書は、その後の不動産登記(名義変更)申請で法務局に提出する重要な書類です。登記の専門家である司法書士に依頼すれば、登記手続きで認められないといった事態を避け、法的に不備のない正確な協議書を作成できます。弁護士が作成した協議書であっても、登記申請前に司法書士に確認することが推奨されるほど、登記手続きは専門的です。 - 将来のトラブルを予防できる
相続人全員の合意内容を、専門家が関与して法的に有効な書面にすることで、後々の「言った、言わない」といったトラブルを防ぐことができます。相続開始後の早い段階で平穏に協議を行い、合理的な合意を形成することは、紛争を未然に防ぎ、相続人間の信頼関係を維持するためにも有用です。 - 身近な相談相手である
司法書士は弁護士よりも全国に多く存在しており、身近な法律の専門家として相談しやすいという利点があります。各都道府県の司法書士会に問い合わせたり、自治体が行っている無料相談を利用したり、インターネットで探すなど、さまざまな方法で相談先を見つけることができます。
3. 司法書士の具体的なサポート内容
ここからは、司法書士が実際にどのような業務を行うのか、具体的なサポート内容について詳しくご紹介します。
相続財産調査や相続人調査の代行
遺産分割協議を始める前の大前提として、「誰が法的な相続人なのか」を確定させる相続人調査と、「何が遺産として存在するのか」を明らかにする財産調査が必要です。司法書士は、これらの調査を代行します。
- 相続人調査
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本などを収集し、法的に相続権を持つ人を正確に特定します。 - 財産調査
不動産、預貯金、株式といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も調査し、遺産の全体像を明らかにします。
遺産分割協議書の作成サポート
相続人全員の合意内容を形にするのが遺産分割協議書です。この書類は、法律で作成が義務付けられているわけではありませんが、不動産の相続登記や銀行預金の名義変更など、さまざまな手続きで提出を求められる極めて重要な文書です。
司法書士は、誰がどの財産を相続するのかを明確に記載し、後日争いが生じないよう、法的に有効な協議書を作成します。また、分割方法には、財産をそのままの形で分ける「現物分割」、売却して現金で分ける「換価分割」、特定の相続人が財産を取得する代わりに他の相続人にお金を支払う「代償分割」などがあります。司法書士は、それぞれの状況に最も適した分割方法を提案することもできます。
紛争予防のための提案
遺産分割の真の目的は、単に財産を分けることだけではありません。その後の家族関係に禍根を残さず、円満な解決を図ることが最も大切です。司法書士は、法的な観点から、将来の紛争を予防するための提案を行います。
たとえば、2024年4月1日から義務化された相続登記の手続きについても、司法書士は専門家として的確に対応します。遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記の義務を履行するための「相続人申告登記」という手続きがあり、こうした新しい制度についても詳しく説明し、最適な手続きを案内します。
4. 司法書士のサポートでスムーズな解決へ
遺産分割は、少しでも「話し合いが難航しそう」「手続きが複雑で分からない」と感じた時点で、できるだけ早く専門家に相談することが、スムーズな解決への近道です。
司法書士に相談する最適なタイミング
具体的には、以下のようなタイミングで司法書士への相談を検討すると良いでしょう。
- 故人が遺言書を残していなかったことが判明したとき
- 相続人の中に、連絡が取りにくい人や話し合いに非協力的な人がいるとき
- 遺産に不動産が含まれており、分け方で揉めそうなとき
- 相続手続きを何から始めればよいか、全く見当がつかないとき
相続は、どのご家庭にも起こりうる身近な法律問題です。問題を先送りにせず、専門家の力を借りることで、心労を減らし、円満な解決を目指すことができます。遺産分割でお困りの際は、ぜひ一度、お近くの司法書士にご相談ください。









